| 中国に入れば中国に従え 伊藤忠マネジメントコンサルティング株式会社
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| さる3月26日(火)に大阪府、IBO主催「最新経済情勢セミナー」を開催し、中国(天津、大連、青島)での通算駐在経験が12年という伊藤忠マネジメントコンサルティング株式会社 海外市場グループ長代行兼中国室長 古屋 明氏に中国経済情勢についてご講演いただいたので、その内容(要旨)を掲載する。 中国の政治情勢 ポスト 2002年9月に開催される「第16回共産党大会」(5年に1回)では、首脳人事(主席・総理)の交代、若返りが図られる予定である。新しい後継人事は、次期主席には胡錦涛(こきんとう)副主席、総理は温家宝(おんかほう)副総理になることがほぼ確実視されている。 昨年を振り返ると7月に2008年北京オリンピック招致に成功、10月には上海APEC開催、12月にはWTOに正式加盟した。中国にとって昨年は「世界に飛躍の年」であり、大きなイベントが多くあった。国家発展計画委員会主任の曽培炎( そばいえん)氏は「WTO加盟は中国にとって大きなチャンスだが、農業をはじめサービス産業、自動車産業を中心に外資との競争が激烈になる。両刃の剣である」と語っている。 中国ではグローバリゼーションを「全球化」と呼び、WTO加盟は「入世」(るーしー)という形で表現されている。一国社会主義の中国が、グローバルパワーとして国際政治・経済に登場したことは見逃せない事実である。 中国経済の規模 GDP 中国の名目GDPは、1996―2000年で年平均8.3%、2001―2005年では年平均7%前後の成長を目標としている。また1兆1,000億USドル(2000年度)から2005年には1兆5,000億USドルへの増加を目標としている。2000年度米国の名目GDPは10兆USドル、日本は4.8兆USドルであり、中国は世界第6位であった。 対外貿易 20年前(1982年)は貿易総額が200億USドルであったが、2001年は総額5,098億USドルの水準までに達し、中国が貿易の分野で急成長していることがわかる。対外的に日本、アメリカが経済不況になると中国が「風邪を引く」と言われるが、貿易収支を見ると2001年は226億USドル、中国は2,200億USドルを超える外貨準備を持っている。これは日本に次いで世界第2位。3位台湾、4位香港と、中華経済圏を併せれば日本を上回る。 対中直接投資 2000 年3 月末累計で約36万4,000社の外資系企業が進出し、このうち日系企業は2万5,000社ともいわれ、主要投資国では1位香港(不動産やIT関連が圧倒的に多い)、日本は2000年統計では第3位、2001年は第4位である。 「世界の工場」の理由 マクロで中国経済を見ると、投資・貿易等、GDPで世界の10指にランキングされている。中国は特に物作りで底力を持ち「中国は世界の工場」と言われている。現在粗鋼、カメラ、家電の生産では世界第1位で、一般品、普及品では確かに量的に冠たるものがあるが、質の部分になると、果たして非常に付加価値の高いもの(デジタル家電など)が作れるのか、産業集積や技術集積があり技術力が高いのか、となるとまだまだその域まで達していないと思われる。 1.世界で最も廉価な労働力 外資企業にとっては賃金上昇の少ない労働力の確保は生産要素として重要である。7〜8%の経済成長にもかかわらずなぜ賃金が上昇しないかというと、都市への人口流入制限により一定期間都市で勤めた労働者は再び地方に帰り、新しい労働者がまた地方から流入してくるからである。 2.産業の集積 対中投資の拡大と集積の結果、技術移転が起こっている。ただし日本のレベルに達するまでには相当の期間が必要であろう。 3.社会・経済・政治の安定 インフラの整備、経済上のファンダメンタルズが良く、港湾・空港・道路・通信・電力のいずれをとってもNIESを除き最も整備されている。日本は3兆円のODAを拠出しており、そのほとんどがインフラ整備に費やされている。上海から郊外に向け高速道路が張り巡らされ、かなり便利になった。外資にとっては内陸部より沿岸部の方が進出しやすいことに変わりない。 4.人民元の安定と外貨準備の累積 中国は、ドルの推移、変動に応じ、て人民元を変動させる事実上のドルペッグ制をとっている。中国人民銀行がドルと元との交換比率レートをプラスマイナス0.3%で抑え、1USドル8.22元、8.23元と極めて安定しており大きな変動はない。最近、変動幅を若干多めに設定する動きがある。 WTC加盟による効果・影響 1.関税引き下げ 全品目平均では17.5%(1998年)から9.8%(2010年)に下げられ、鉱工業品は16.6%から8.9%へ、農産品は22.7%から15%へと関税が大幅に下がる。中国は農業では国内相場よりも国際相場が安く、関税が下がることで海外の農産物が大量に流入してくる可能性が高い。現在政府は、農民の収入を上げる政策をとっており、外国からの農産物の流入によってダメージを受ければ農民の失業者が増えることになるので政策とは逆に働く可能性がある。 2.サービス産業の自由化 中国で第3次産業の占める割合は34%で、日本やアメリカに比べると低い。中国は、これまで流通、卸売りを含めて第3次産業が発展した歴史がない。イトーヨーカドーは1997年に北京に進出し、2001年末に2店舗目を開業している。中国の内需、購買力が増大すると、中国マーケットを狙った外資の小売業・卸業者、流通業者の参入が今後増えていく。そうなれば弱小の中国の第3次産業はダメージを受けるだろう。 自動車産業も中国は弱い分野で、国産車を現在製造していない。中国には100社強の自動車メーカーがあり、大きな企業は提携できるが、弱小なところが淘汰されていくだろう。 3.セーフガード 昨年、中国産の廉価なねぎ、生しいたけ、タタミオモテが日本の生産業者にダメージを与えたため、日本政府はセーフガードを発動した。これに対抗して中国はエアコン、携帯電話、自動車に報復措置として関税100%をかけた。同様の問題は今後いろんな分野で起きかねない。そうなると日中関係が悪い方向に進んでしまう。しかし、幸いなことに、中国側の輸出・日本側の輸入を抑制しよういうことを日中間で話し合い、数量的にセーブしていこうという枠組みができたので抑制された秩序ある貿易が行えるようになると思う。 4.経過的審査 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)が中国の義務履行状況を毎年審査する(2002年から10年間)ことにより、改善が求められる部分については実行されていくであろう。 5.貿易権自由化 これまで、進出企業は中国の工場で製造している商品に必要な原材料の輸入や、製造した商品の輸出及び国内販売は認められていた。今後はさらに開放され、中国で製造した物以外の物の貿易が認められる。また、中国品調達義務が撤廃され、さらに自由に中国国内で外貨を調達して原料を輸入できるようになる。 今後の魅力あるビジネス分野 1.住宅産業関連分野(持家制度促進・マイホームブーム) 開放政策により、民間のデベロッパーが住宅を供給するようになり、また住宅ローンも前年比30%増加したとも言われており、今後も自分の家を持ちたいという動きが活発化していくだろう。 2.モータリゼーション(マイカーブーム)など ホンダアコードは注文しても現在8カ月待たないと入手できない。ホンダはブランドイメージが強く人気が高い。外国車が入ってきたため、競合の中で価格を下げざるを得なくなり、中国国内で作っている車の値段が15%〜20%下がった。今後、量産体制に入って買いやすい価格帯になれば、マイカーブームがおきるだろう。 3.卸・小売業分野(コンビニ・デパート) (略) 4.情報通信分野、環境関連分野(略) 中国進出上の注意事項 中国への進出形態は合弁、独資、合作の3つがあるが、国内販売の場合は合弁の方が適しているだろう。パートナーの選定、販売のネットワークの構築、物流の手段をどう講じるのか等、販売相手を見つけ、どこに販売するかを考える必要がある。 念頭に入れておくべき事項は、1.適当なパートナーの選定(財務状態、TOPの資質、地元政府との人脈) 2.企業誘致に熱心な地元政府 3.緻密な契約書の作成(出資比率の決定、借入金の手当て、輸出か内販か、撤退条件の明確化、董事会組織、重要事項の決定方法) 4.適正な従業員の雇用(人物本位で行うべき。縁故採用は慎むべき) 5.徹底的な経済性調査(コスト計算―税金、インフラコスト、原材料、従業員給与等―を入念に行う) 6.原材料・部品の現地調達 7.国内販売の場合の注意事項(物流コスト、販売ネットワーク販売先、代金回収) 8.法律制度、税制優遇制度のチェック 9.円滑な人民元・外貨調達 10.現地の優秀なスタッフの確保 11.「郷に入れば郷に従え」(中国の文化・歴史・商習慣を事前に把握) 12.知的財産権の保護(商標権、意匠権・著作権) 13.日本の成功例に安住しない一などを踏まえて、きちんと調査をした上で進出するのがよい。チャイナシフトの前にチャイナリスクを考えないと、失敗する恐れがある。失敗した企業が我々のところに来て相談をするが、最初にコンサルタントに相談すれば初歩的なミスを回避できたかもしれない。リスクはあると言うことを考えた上でじっくりとF/S(企業化調査)されることをお勧めする。 模倣品対策の現状 中国は模倣品が多い。中国の技術力がアップし本物に近い品質のよい偽物が増え、被害も多い。ジェトロ北京センターが日系企業3,000社(回答672社)を対象にアンケートした結果が去年12月に報告された。報告によると、進出した日系企業のうち54%が偽物の被害を受けている。被害企業のうち売上損失が1億円以上の企業が31%、また半数の企業が偽物被害は悪化傾向にあるという結果が出ている。中国が市場経済の移行期であり、手っ取り早くお金儲けをしようと誰もが考えるわけだが、世界で売れている名の知れたブランド品を真似て売れば開発費も販売広告費も保守点検等のメンテナンスの費用もいらない。ブランド品が被害に遭いやすい環境にある。 模倣品の2000年被害実態調査では、34%が中国で製造され、続いて台湾18%、韓国14%である。流通している国は欧州が15% 、中国14%、北米9%、台湾9%、韓国7%、香港6%となっている。 ジェトロは以下のような点を挙げ“偽物に対する啓蒙”を行っている。即ち、悪貨は良貨を駆逐する。 1.模範品は単なる「有名税」ではない 2.「最後に本物が勝つ」式楽観論は禁物。“命取り”になりかねない 3.売れ筋商品が狙われやすい。狙われた企業のダメージは深刻。倒産した企業もある。氾濫している日本製品がターゲットにされやすい−など。模倣品が発生する主要な要因は、 1.本物と模倣品の大きな価格差 2.本物の供給不足 3.部品調達を含めた製造技術管理の甘さ 4.模倣品が混入しやすい流通管理体制 5.地方保護主義のばっこ 6.モグラたたき的対症療法―などが挙げられる。全社的対応が急がれる。 さいごに 中国は外国である。日本国内で成功したという事例を持ち込まないこと。中国人とは風俗、習慣、文化も違う。日本のやり方とは違って、戸惑うことも多い。中国の文化、商習慣はこういうものだったのかが初めてわかる。ややもすると日本人は中国文化に近い、漢字を使う、箸を使う、米を食べているから同じだろうという感覚で入る傾向にある。似ていると親近感も生まれてくるが中国においては一から始める、投資環境もまったく違うということを常に念頭においていただきたい。 (伊藤忠マネジメントコンサルティング株式会社 |
| 海外市場グループ長代行兼中国室長 古屋 明) |