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日系企業に聞く〜中国で成功する秘訣とは?〜
 

上海事務所 所長 草薙 勝之

 「中国で成功する秘訣とは?」―その鍵の一つが、現地に派遣する代表者(中国では「総経理」という)の資質であることは間違いがない。上海にある約3,000社(登録ベース)の日系企業のなかで、日本の本社からも現地からも評価される総経理とは、一体どのようなタイプの人物であろうか?
 上海市は、外国人の功労者に対して、「上海市栄誉市民」、「白玉蘭栄誉賞」、「白玉蘭記念賞」を授与している。しかし上海に在住する日本人が受賞しているケースは数少ない。その数少ない受賞者の中で今回話を聞いた上海神明電機有限公司 総経理秦 範雄氏(「白玉蘭栄誉賞」、「白玉蘭記念賞」受賞)と上海JVC電器有限公司 総経理 本郷 正行氏(「白玉蘭栄誉賞」、「白玉蘭記念賞」受賞)のお二人に「中国での経営について」伺った。お二人とも人間的魅力のためか、すがすがしく感じ、元気を与えてくれた。

1.上海神明電機有限公司
 総経理 秦 範雄氏
 会社概要

 日本側出資会社の神明電機株式会社(本社:川崎市)は、電子部品製造販売(コンピューター、AV、情報、通信、カメラ、OA、遊戯機器等用スイッチ、ソレノイド、リレー)などを生産するする従業員140名(グループ全体約5,000人)、年商約100億円の企業であり、中国国内に2ヵ所、他香港、台湾、インドネシアに拠点を有している。
 上海神明電機有限公司(出資比率日本側70%、中国側30%)の設立は、上海発展の基礎が築かれた1988年6月である。上海市最初の経済開発区である閔行経済開発区(市中心部から南へ約35km) に立地し、小平氏の南巡視察(1992年)にも立ち会った経験を持つ。現在、従業員約3,200名、月間製品生産高5,000万個、さらに、1994年、江蘇省太倉市にリレースイッチ専門工場(月産300万個)である太倉神明電子有限公司を設立した。

愛と情熱経営
 見るからに大人然とした風貌の秦氏である。1961年、ペンテルの香港支店勤務後、家業、スミダ電機、神明電機と、一貫して中国とかかわりを有し、また、奥様は香港人で、現在、妻子はカナダ・トロントの自宅に暮らしている。
 上海生活13年の秦氏は、中国文学への素養があり完璧な中国語を駆使し、社内会議も中国語で進行させる。「無理だ。仕方がない」の厚い壁、「船頭多くして、船、山に登る」式の仕事の進め方などに対し真正面からぶつかってきた豊富な実体験を持つ。一方、従業員へは愛のまなざしを向け、温か味のある工場経営を行っている。中国の社会情勢には一家言をもつが、その人柄はおおらかでやさしく、外国人で4人目の「永久居留証」を取得するなど、中国政府からも大きく評価されている。

2.上海JVC電器有限公司
 総経理 本郷 正行氏
 会社概要

 日本側出資会社の株式会社日本ビクター(本社:横浜市)は、ビデオ、DVDなどの民生用機器や音楽メディアなどを扱う一部上場企業である。
 上海JVC電器有限公司(出資比率日本側55% 、中国側45% ) は1992年9月、外高橋保税区(市中心部から北東約20km)内最初の加工貿易企業として設立され、1994年3月からオーディオ生産を開始している。現在、DVDプレーヤー、ウルトラマイクロコンポなどを生産し、生産能力は年間200万台。海外輸出が92%で、内欧米向けは全体の70%、日本向けは12%である。

感動経営・三立経営・三顧の礼
 本郷氏は海外勤務20年以上のベテランであるが、1996年7月、マレーシアから初めて中国に赴任した。赴任直後、社内上級幹部間の意見の不一致、経営に対する危機感の希薄さ(親会社頼み)、不要部門・余剰人員の存在など10項目の改革の必要性を感じ、経営理念に「感動経営」を、合弁理念に「三立経営」を、対人関係理念に「三顧の礼」を打ち出した。その後、1997年のアジア通貨危機をばねにして上海JVCを黒字体質の企業に変革した。とりわけ、日本代表、中国代表、組合代表の三者の経営責任分担の明確化、各自の立場の尊重、三者の合意、徹底対話を旨とする全員経営の実現(三立経営)に意を尽くし、会社組織の一枚岩化に成功するなど、合弁経営の有利さを引き出したその実行力は敬服に値する。
 本郷氏は、オーディオ海外生産96%時代(家電生産における国際水平分業が崩壊し、サバイバル化が激化)のなかで、2000年にR&Dセンターを設立、「従来型から知恵型への転換」、「一層の企業危機管理の充実」に余念がない一方、外高橋保税区の顧問や日本語弁論大会への支援など社会貢献活動にも精力的に行動している。

中国で成功する秘訣
 “Think Globally, Act Locally.”―二人を参考にして「成功する総経理像」を考えると、(1)常にプラス思考をもち、自ら論理的・戦略的に考える(2)自ら情熱をもって、実行力で戦う(3)自己の性格や経歴、環境の枠に自縛されない(4)人間関係を重視し、他人と協調しお互いに成果を出す(5)日本人としての誇りを大切にし、かつ現地に溶け込む(6)中国の歴史、現代に対する関心と知識を有する―ことができる人と要約することができる。

(上海事務所 所長 草薙 勝之)