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委託加工貿易のすすめ
〜中国〜


貿易・投資相談員 米永 繁夫

 
 平成13年版通商白書で、「ものづくり大国」中国の台頭が大きく取り上げられて以来、「世界の工場」として注目を浴び、中国での生産シフトに拍車がかかっている。IBO投資相談でも、一昨年は低調であったが、昨年から毎週数社づつの相談が相次いで、一転して活況を呈している。特に多いのが、中小企業製造業で、コスト低減を目的とした中国への生産シフトである。従来から国内で懸命の合理化をすすめコスト削減に取り組んできたが、同業者が中国生産品を納入するとそれが相場となり、国内生産ではどうしてもコスト面で対応できないとして、相談に見えるケースが多い。
 その場合でも、「始めから現地法人設立ありき」で相談に見えるが、国内に販売先があってコスト低減のためだけなら、現地法人を設立しなくても、委託加工貿易で同じ効果が得られる。委託加工貿易では、中国国内での販売ができないので、製品はすべて引き取ることが前提になる。今までIBOニュースでも委託加工貿易について、紹介されている(「転廠取引への影響」IBOニュースNo.96 1999年6月号)が、おさらいの意味を込めて改めてご紹介したい。委託加工貿易とは、「三来一補」といわれるもので、3つの形態の委託加工(「三来」)と補償貿易(「一補」)をいう。「三来」とは、「来料加工」(外国企業から原材料の提供を受けて中国側が加工し、外国企業から加工賃を受け取るもの)、「来様加工」(外国企業からサンプル、仕様の提供を受けて加工し、外国企業から加工賃材料費を受け取るもの)と「来件装配」(外国企業から部品の提供を受けて加工組み立てし、外国企業から加工賃を受け取るもの。ノックダウン)である。また、来料加工は外国側が原材料を無償で提供するが、無償ではなく有償で提供する場合は「進料加工」になる。
 委託加工貿易は、外国企業にとって初期投資がほとんど要らず、中国の低賃金労働を活用できる。中国側にとっても、資本・技術がなくても外貨を稼げるメリットがある。このため、香港を拠点とする広東省と上海を中心とする華東地区などで広く普及している。
 特に、香港を拠点として広東省で展開する委託加工は、「既存の企業や工場に生産を委託する」という本来の意味での委託加工とは別に、実質独資企業的に運営されている形態が多い。また広東省では「転廠(てんしょう)」という独自の柔軟な制度もあり、産業集積を効率的に利用することもできる。繊維、アパレル関係は上海を中心とする華東地区に集中しているが、広東省は衣料、玩具、家電、複写機、通信機器など多岐にわたり、委託加工の最も盛んな地域になっている。
 香港を拠点として、広東省に展開する委託加工の典型例である「来料加工」は次のようなものである。日本企業が香港に現地法人を作り、その現地法人が契約当事者となり、地方政府(県、区、郷、鎮)と生産委託加工契約をする。
 香港現地法人は、生産設備、原材料の提供、技術指導、製品の引き取りなどを担当し、地方政府側は、土地・建物の提供、ワーカーの確保と労務管理、税関手続きを担当する。工場は保税扱いで税金が掛からず、必要な機械設備や原材料の持ち込みができる。現地での部品購入も『転廠』で同様にすることができる。香港から技術者や工場管理者を派遣して運営するので、実質自社工場と変わるところがない。
 これを図示すれば次のようになる。本来の意味での委託加工であれば、既存の企業や工場に生産を委託するので、知的所有権の問題や提供原材料を外に転用されるなどのリスクもあるが、広東方式では自社の問題として自ら管理できる。
 一般に委託加工での一番の問題点は品質の確保であり、委託先の技術力とトップの人柄が成否のカギといわれているが、広東方式ではこれも自社の問題として解決できる。これらの要素が相まって広東省での委託加工を盛んにしている。

[転廠]
 広東省内の現地工場で委託加工されたものはすべて香港へ出すのが原則であるが、広東省内の他の現地工場がその製品を必要としているとき、現地→香港→現地の物流と手間を省くため、他の委託工場へ製品を直接移動させる仕組み

(貿易・投資相談員 米永 繁夫)