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上海での入院体験
上海事務所 次長 町原 豊和
 もし、日本人が上海滞在中に急病にかかり、しかも休日の最中、痛みに堪えられないケースが生じた場合どうすればよいか。中国において外国人が病気になったときは、通常外国人診療区を併せもった病院で治療を受ける。上海においてこうした病院は、「上海市第一人民医院国際保健中心(IMCC)」「中山病院」「華山病院」「華東病院」「第六人民病院」などがある。また在留日本人向け総合病院では、国立上海大学附属中山病院との合作で開設された「AHS逸仙会病院」、他にも日本語対応の「浦東森茂診療所」「日中合資上海瑞東病院」「上海瑞新国際医療中心(ワールドリンク)虹橋クリニック」など、中国系・日系を問わず、上海の病院(診療所)の数は中国でもトップクラスであり、日本人駐在員及びその家族にとって、心強い限りである。
 さらに、医療サービス機関として、中国内各地の提携病院や薬局の紹介を、電話(日本語可)で行うことができる「上海ウェルビー医療コンサルタント」(会員制)や、ジェット機を有し、重病人の緊急搬送に実績のある「インターナショナルSOS」、保険会社の海外旅行クレームエージェントである「プレステージ・インターナショナル」などがある。しかし、いざ突然の病気やケガで異国の病院にかかるとなると、肉体面はもちろん精神面での不安やストレスが生じることは、否定できない。駐在員や来訪者にとっては他人事ではないこの問題について、筆者の赴任早々の実体験を記したい。
 労働節の連休で外灘や南京路が中国内外の観光客で賑わう状況の中、腰に突然痛みを感じ、上海ウェルビーの紹介により筆者が駆け込んだ病院は、外灘の北側に位置する虹口区九龍路沿いの「IMCC」である。1864年に創設された同市の代表的な総合病院であるといわれるカトリック系病院「上海市第一人民病院(FPH)」に併設しているIMCCは、オーストリア政府の借款等により、1993年に設立された医療保健機関である。24時間各科問診・急診体制を敷き、入院も可能なセンターである。
 痛み止めの投薬や注射を受ければ帰宅できるとばかり考えていた筆者は、腰部に傷がありそこが化膿しているとの理由で中国人医師から即入院を勧められた。突然の入院勧告に不安を感じたが、「現在、骨折治療等で日本人が5〜6人入院している」「列車衝突事故での日本人負傷者を治療した実績がある」と聞き、また患部治療は早期に処置する方が後々のことを考えても良いと判断し、即座に医師の勧めに従った。そして日本での入院体験を思い出しつつ、入院手続を確認しようとすると、「現在当センターは増築中のため、(工事に伴う騒音等)不便をおかけしますがご了承ください」と書かれた通知文書を一枚渡されたのみで、即病室に通されてしまった。筆者が入院した外賓(外国人診療)用の個室には、ベッド2台、電話、テレビ(CNNとBS1が視聴可)、鏡台、浴槽、トイレ、冷蔵庫、水道付洗面台、衣料棚が完備され、また寝巻、歯ブラシ、シャンプー、ボディソープ、緑茶、ミネラルウォーター、夕刊紙が供与された。日本の病院では「入院時の注意事項」「内線電話一覧」のような冊子が置かれているのが一般的であろうが、室内にあった冊子は当病院のPRパンフレットのみである。
 入院1日目、患者が散歩するためであろうか病室間の仕切りが無いバルコニーを、他室の入院患者が往来し筆者の病室内を覗き込んできたことに些か閉口し、また病院食が写真のとおり日本では想像し難い程のボリュームに満ちた白飯や油をふんだんに使った惣菜に驚きながら(最初の回診に来た医師の、最初の言葉は「食事は予約されましたか」また食事を持ってきた職員曰く「栄養が豊富です」、その通りなのであるが…。)、入院2日目に化膿部切開手術を受けることとなった。慌しく手術室に搬送され、執刀医や補助員10名程に囲まれながら手術台で誓約書にサインし、「体の力を抜きなさい」との執刀医の言葉に従えず、背中に十数分間(と感じた)麻酔注射を打たれた時は悲鳴を上げる程の苦痛を感じ、画鋲のようなピンで患部周辺をチクチク刺されながら麻酔効果の確認を受け、冷汗でびしょ濡れになりながらも、切開手術は約30分で終了し、数日後に無事退院することができた。
 在中国日本人が、いつ思いがけず体調を崩し、慣れぬ異国の治療を受けざるを得ないか分からず、治療を受けると「郷に入っては郷に従え」と言葉として理解しつつも、実際上中国の習慣に根ざした医療に戸惑うことが十分予想される。筆者は、今後上海にお越しになられる方々が、もしそうしたケースに不幸にして遭遇された場合、本入院体験を生かし上手に病院と付き合われることを期待(?)して、情報提供させていただいた次第である。

(上海事務所 次長 町原 豊和)