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IBOニュース  平成11年12月号(No.101)

 21世紀を見据える上海の都市計画〜これからの上海はどう変わる?〜

上海事務所  次長  堅田進一

  国慶節で盛り上がる中国

 今からさかのぼること50年、つまり1949年の10月1日にかの毛沢東氏が北京天安門で中華人民共和国の成立を宣言した。以来、中国では紆余曲折を経て1978年末の改革開放政策を実施し、あらゆる面で飛躍的な発展を遂げてきた。

 建国50周年の節目となる今年、10月1日は北京、上海など中国各地で様々な祝賀行事が行われたが、参加者延べ200万人にのぼった北京でのパレードは日本でもテレビなどで報道されていた。

 中国では、建国50周年を機に国慶節の祝日を1日増やし10月1日から3日までとしたが、今年は特にこれを7日まで延長するよう推奨し、北京、広州などの都市部では大勢の観光客で大変な混雑となった。

 ここ上海でも1日夜には主要道路や外灘の建築物に施された各種イルミネーションが一斉に点灯され、黄浦江にはライトアップされた遊覧船が賑々しく水面を滑り、市内10カ所から合計約5万発という大量の花火が夜空に開花するなどお祭りムード一色につつまれた。またこの期間中は、各地から、また外国から、観光客が平常よりも多く訪れ、歩行者天国として誕生した南京路、おしゃれな淮海路、外灘、豫園、四川路、さらに上海動物園、東方明珠や歴史的に有名な大世界までがふだんは空いているのにこの時ばかりは大変な賑わいをみせていた。これら市内17カ所の観光施設では1日平均17万人余りの来訪者を記録し、国慶節の連休はどこも人で埋めつくされた。

 この国慶節フィーバーを予想してかこれを受け入れる大型プロジェクトも続々と完成している。浦東新区の東端に出現した浦東新国際空港は国内定期便を運用開始し、上海周辺では上海と結ぶ高速道路も開通、延安高架道路など市内の交通網も整備されて、10月1日に沸く上海の繁華街を一層華やいだものにした。

 

未来に向け始まった上海都市総合計画

 ところで陳良宇上海副市長は、「上海市内は発展のショーウインド、市郊外は総合力を表す羅針盤」と上海市政府工作会議の中で発言し、同市の経済発展を推進することを表明したが、ここ数年来の飛躍的な経済成長を持続、発展的なものとするため、上海市が21世紀を見越した都市としての機能を充実、整備することが、ある意味で今回の国慶節を節目として課せられた問題でもある。現在、上海市の未来を左右する新たな「上海市都市総合計画」の策定が着々と進んでいる。

 そもそも現在の上海を築き上げたのは、1986年の「上海市都市計画」であった。中国政府は上海市が国内最大の経済都市として発展するよう浦東新区の開発を承認、同時に市政府は都市計画を策定し、これに基づいて今日の国際的金融及び物流基地として文字通り国際都市としての地位を確立しているのである。

 さて、急速に発展した上海ではあるが、ここにきて都市計画にも様々な歪みが生じてきたことも見逃せないこととしてクローズアップされてきた。

 そこで今回、現況を踏まえつつ現計画を修正拡大した新たな「上海市総合計画」を作成したが、現在中央国務院の審査を受けて、まもなく認可が下りるであろう。以下、この計画の概要を紹介してみたい。

 本計画は、人間、都市、環境の3つの調和を基本理念に置き、産業分野毎に工業、住宅、商業、交通、環境等と分けて描かれている。対象面積は、市中心部と郊外県域の上海市全域(郊外県市域とは、市内16区を取り巻く南匯、奉賢、青浦、崇明の4県を示す)。特に浦東新区は計画の重点地区として整備されようとしている。

(1)工業分野

 市内各開発区には高水準の整備条件、すなわち電気、ガス、道路等のインフラ施設を完備することを先決とする(俗に七通一平と呼ばれているものである)。

 現在の工業区(曹河径、浦東金橋、松江、金山)は現状維持とし、市内に散在する工場等を内環状線の外側へ移転させ、環境、交通状況の改善を図り、効率的な生産を目指す。また、三大ハイテク産業、六大基幹産業及び都市型産業の発展に重点を置くこととしている。

 すなわち情報、バイオ、新素材のハイテク分野、自動車、発電、石化、鉄鋼、家電、伝統産業の基幹産業及びファッション、食品、印刷、インテリア、工芸美術、健康器具などの都市型産業の振興を推進するものである。

(2)住宅分野

 第一に、老朽住宅の改築と居住面積の改善を図る。

 1991年の統計では、老朽住宅(1949年以前に存在している建物)の総面積は365万uとなっている。現在までこの改築を進めてきたが、このうち残りの125万uを2000年までに完了させる。また住環境について、市内都市部の一人当たりの居住面積を10uとなるよう改善するとともに道路、交通網の整備と商業ゾーンとの調和を図り、住みよい住宅ゾーンの整備を行う。

 さらに市内17カ所において新築住宅建設を進め、主な建設区域を外環状と内環状の中間区域に置いて、主要交通幹線を整備し、利便性のある高水準の住宅供給を実施する計画である。

(3)商業分野

 この分野では、欧米、日本などの先進国にみられるように今後は上海においても第三次産業、特にサービス部門の発展を重点に整備実施すること、またこれにともなう新たな雇用機会の増大を視野に入れた施策を行う。

 注目すべき点は、外灘ゾーンの金融街としての整備。対岸の浦東陸家嘴金融貿易区と連携を図り、外灘に銀行を集中させるとともにその他の業種の企業の移転を奨励する、というもの。これにより黄浦江を挟む両岸は、上海市が目指すアジアのウォール街にまた一歩近づきそうだ。

 住民の生活に便利なショッピング街は、南京路、淮海路、西藏路、四川北路の4大主要道路を中心とした商業ゾーンを計画、整備する。

 さらに4商業城(エリア=専門店、百貨店が集中している地域)として、豫園商城、徐家匯、不夜城(上海駅付近)、浦東八百伴=新上海商城に再編整備し、これらと区県レベルに身近な中小規模商業センターをそれぞれ設置する。

(4)交通分野

 交通網を空、陸、水に大別し、さらに陸では鉄道と道路に分け、道路は中、近、市内距離に細分する。

 空路では、浦東新国際空港を建設(一部供用開始、完全整備完了2010年以降)し、虹橋国際空港との併用として両空港を地下鉄2号線で直結させることが主な計画となる。

 水路に関する計画では、港湾施設の整備と黄浦江の利用拡大を中心として、造船所の建設、長江河口周辺の整備、黄浦江水深改良など用途拡大を図る。

 陸路の整備では、まず鉄道施設の整備。現在の上海駅のほか市内南西部に新上海駅を建設し、杭州方面の利便性を高めるほか、前述の地下鉄2号線の一部運行、高架軌道の明珠線の完成も間近に迫っている。

 しかし全体としては地下鉄11本、モノレール10本という今考えると遠大な構想ではあるため、発展の経過を見定めつつ整備される見通しで、これは今後の動向を見守る必要がありそうだ。

 道路網では、基本路線を3環状10放射線として中近距離道路網を整備する。どこかで聞いたことのある計画だが、上海市内中心部と上海市郊外を通貨して、蘇州、広州方面とを直結する道路網の整備には、やはりこの方式が適しているのだろう。

 また市内交通網では、上海を示す『申』の文字をイメージして高架道路を整備する。すでにこの文字通り完成しているが、実際の道路の形状からすると東西にさらに各々延伸するようである。

 また地上道路を3×3縦横道路網(片側2〜3車線の主要道路を縦横3本ずつ整備)として整備し、高架道路と立体的、機能的に連携を図ろうとしている。これは特に住民生活に不可欠な整備であることから、住宅や商店街との調和を念頭に置いたものとして計画されている。

(5)環境分野

 産業の発展とともに上海の環境も大気、水質をはじめとして次第に悪化してきている。

 現在、主に問題となっているのは、自動車の排ガス、黄浦江の水質、それに生活ゴミ(発泡スチロール、ビニール袋等)などが深刻化しているが、早急な解決は困難と考えられている。

 そこで本計画ではまず、黄浦江の水質改善、特に汚染の激しい黄浦江に注ぐ蘇州河の改善と両岸整備を最重点項目に挙げている。川底の浚渫及び垂直緑化を施し、蘇州河両岸を市民の憩いの場を提供するもので、一部は既に着工あるいは完了している。

 このほか、黄浦江上流の水質改善及び上流付近において工場排水一次処理施設の建設も計画されているが、改善が現れるのはまだ先のようである。

 排ガス対策については、ガソリンの無鉛化、LPガスの普及で当面は対処し、ナンバープレートによる市内への総量規制、低公害車の導入も検討されている。

 ゴミ対策では、従来の埋立て処理一辺倒の方法から施設での化学的分解処理の導入や分別処理の啓発などが計画されているが、これはいずれも市民の都市公害に対する一人一人が担うべき役割や環境改善への意識からするとすんなりとは行かないだろう。

 このようにすべて建設、新築ラッシュが圧倒的に多いが、一世を風靡した歴史的建造物に対する整備も本計画には盛り込まれている。これは、外灘をはじめとする旧租界地区、徐家匯、豫園及びその周辺にはまだまだ1900年当時の建物が残されているが、これらを保存、継承し、旧市街区として保護していくものである。

 また、これら区域周辺の高層建築物の建設禁止や高さ制限、また大型広告の規制などの諸対策が講じられて、複合的に対策を立てているのが注目される。

 これらの計画以外に緑化計画、公共施設、エネルギー供給施設の建設計画などが盛り込まれている。

 また、この計画を国内外に広報するための施設はほとんど完成している。4階建てで、フロア毎に上海の歴史、総合計画(市全体)、完成後の上海の姿、総合計画(分野別)の展示がなされており、ジオラマ、映像などをふんだんに用いて訪れる人に分かりやすい工夫がされている。

 当事務所からは、上海博物館、人民広場に向かって西からグランドシアター、人民政府庁舎、それにこの上海都市計画展示館が鎮座しているのが見えるが、これらは一体となってさながら近未来都市建築物の様相を呈している。夜間は特に美しい。 

変貌を遂げる上海

 古くから上海との関わりを持つ人が昔の上海を振り返りながら感慨深げに語ってくれたことを思い出した。最初に浦東新区を視察し、上海港建設が計画されている現場を見たとき、こんな何もないところに絶対に中国一の港なんかできるはずかないと思っていたが、数年後の再訪問でみごとに埠頭、コンテナヤード、クレーンなどが完成しているのを目の当たりにして、計画を着実に進める上海の力量に感嘆したそうである。またこのような話は、先輩の駐在員からも幾度となく耳にしたし、自らも少ない経験ながら実感している。

 浦東新区の本格的開発が始まって10年も経っていないのである。これまで明らかになった本計画の内容はあくまで概要であり、その根拠、積算、具体的数量等は11月の時点では発表されていない。果たしてどの程度まで実施可能なのだろう。

 これらの総花的な計画は、夢物語として一見冷やかに見てしまいがちだが、しかし1986年に策定された先代の「都市計画」から15年足らずで今日の上海が形成されており、また前述の例からしても、今回の「上海市都市総合計画」もまた着実に実行されていくであろうことは想像に難くない。

 今から10年後、すなわち計画の最終目標年次の2010年には、上海は今とは想像もつかない姿を再び我々の前に現すのだろうか。