昨年華々しくデビューした上海浦東国際空港を離れると、郊外のたたずまいとともに片側4車線の真っ直ぐに伸びたアクセス道路がある。この、行き交う車もまばらな高規格道路をフリーウェーらしく快適に車で疾走する。日本でも馴染みのある情景だが、しばらく道なりに20分ほど走るとさすがに混雑した上海市内の様相を帯びてくる。
現在、上海でも公共交通機関は基本的にバスに頼らざるを得ないため、道路の占有率もバスが幅を利かせているが、人などが縦横無尽に横断し、バスが黒煙を吐きつつ重なり合って通過し、その隙間を縫うようにタクシーや乗用車がクラクションを鳴らして車線変更を頻繁に繰り返して先を急ぐ・・・。
はじめて上海の地に踏み入れた時、我々がまず驚かされるのは、高層のビルが林立する大都会国際都市上海の顔、そして大いに戸惑う、この、表現に苦労する交通事情であろう。
赤信号でも横断
しかしこの交通事情、上海人達はあまり違和感がなさそうだ。急ブレーキをかけられたバス、タクシーの乗客は少しも騒がず、驚かず、乗務員や自転車、オートバイ、歩行者はクラクションを知らぬ顔で自分達の行きたい方向へ突き進んでいく。もっとも警察もこの状態を放置するわけにはいかず、主だった交差点、レーンが離合する個所には警官を配置し、車両の整理指導(取締り)にあたってはいるが、その傍らでは何事か?といぶかしげな顔をして人々は赤信号にもかかわらず交差点を横断していく。
違反車両には即決で罰金(5元から20元程度)がその場で課せられるが、違反者の車両は道路上に無造作に放置され、通過する他の車両は仕方なくその車両を避けるため無理矢理車線を変更するのでまたそこで混乱する。中には決定を不服として逆に食ってかかるドライバーもおり、(これはいままでの中国のイメージとは異なるのだが)さらに野次馬が加わって時として混乱はどんどん大きくなる。訪れる外国人の目を丸くさせる交通事情の代表例である。
車も人も右側通行
規則上、中国は日本とは異なり、「車は右側通行、人も右側」である。さらに交差点内では、原則として「右折可」(日本でいう左折可)である。もうひとつ、交差点の信号システムに一時的に全て赤にして交差点内の車を排除する「全赤時間がない」という事情もある。まだある、一般的に「交差点はUターン可能」である等々・・・。
右側通行は見慣れてしまえばなんということはないが、右折可と全赤だけはうっかりすると危険な目に遭うから、我々外国人は要注意である。またU
ターンは後続の車、対向車の円滑な通行に支障を来たす。
上海市の公安局交通総隊の幹部に話をする機会があったので、この交通事情について交通指導の現状を聞いてみた。いわく、今上海では急激な車の増加に対応するため、機敏な移動を可能にするよりも、かさばる車を円滑に流動させることを最優先に考えている。すなわち信号を増やさず、各信号の時間を短縮して待ち時間を少なくし、左折レーンを設置するなどに加え、前述の交差点での警察官の交通整理を、昼夜を問わず実施するなどである。
人への指導はどうか?と尋ねると、これは「禁」と大きく書いた赤旗をもった警察官OBのボランティアが混雑している交差点で(フエをピーピー吹きながら)整理にあたっている。―とはいえ、我々から見ると、これら公安関係者の指導はあまり効果が上がっているように見えないのだが・・・。
大阪府の統計によると、今年の3月現在、府内の自動車登録台数は379万台、自転車はここに含まれてはいない。大阪府内では相変わらずの渋滞が至る所で整然として発生しているが、一方、統計上、大阪府の約4倍の面積をもつ上海は昨年末で60万台、自転車を合わせてほぼ同数の390万台で、道路が整備された今はあまり目立った渋滞はない。数字から見ると上海のこの交通状況、今はまだいいが、これからの課題は、WTO加盟を期に予想される自動車産業の発展と上海市民の所得向上に伴い増加する車両保有台数に対処できるシステムの確立と、マナー向上のための市民への啓発指導であろう。
方向別レーンやバスレーンの設置拡大や注意、案内標識の設置はぜひとも実施してもらいたいが、なによりもまず教育機関を含めた市民への交通ルール、マナー向上の啓発指導が急務である。ここ10年程で車が急増し、道路を我が物顔に走り出したが、昔から自分の足で自由に移動して来た人間の意識が簡単に変わるわけがないのだから!
(上海事務所 次長 堅田進一) |