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先般、大阪府日中経済交流協会の例会で、弁護士の村尾達雄氏による首題の講演が行われた。その内容が非常に良かったので、協会および村尾弁護士のご快諾を得て概要をご紹介します。
第一.企業撤退の原因分析
原因を、研究不足型、信頼関係破壊型、市場制度変化型、親会社経営危機型および企業統廃合型−の5つ
に分けることができる。
研究不足型では、さらに(1)単純研究不足型(2)他人依存型(3)相手方研究不足型−に分けられる。(1)単純研究不足型は、「中国は人が多い=市場がある」「労賃が安い=生産コストを下げられる」という単純発想に基づくもの。これは中小企業に限らず、大企業でも案外多い。例えば、現地生産する場合、材料一つをとって見ても、日本国内と違って品質/納期/価格に問題が存在している。事前にちょっと調べれば分かることで、“怠慢”としか言いようがない。(2)他人依存型は、悪徳コンサルタントを過度に信頼して、億単位のお金をサギ同然で取られた事例がある。このコンサルタントは香港人で、日本側の無知と過度の信頼につけ込んだもので、日本側に一定の自立心があれば防げたケース。(3)相手方研究不足型は、文字通り相手のことは何も調べずに、“歓迎/乾杯”ムードで進めてしまうケース。トップが見つけてきた相手やトップ主導でコトを進める場合、特におろそかになる。
信頼関係破壊型では、(1)中国側による信頼関係破壊型(2)日本側による信頼関係破壊型−がある。(1)の場合は、中国側が自社商標を第三者に登録させ、それを合併会社で買い取らせようとしたものや、合弁会社への日本側振り込み資本金を中国側が勝手に引き出して自社の借金返済に流用した事例などがある。非は中国側にあるが、「お腹の空いた子供の前にケーキを置いて、食べるな」という方が無理な話で、相手の経営状態を事前に調べれば回避できるもの。相手の財務状態など調べるには、地域によって取り扱いが異なるが、中国人弁護士を通じて相手会社の年次報告書を見ることもできる。費用は1件3,000元(1元=約13円)程度。(2)日本側による信頼関係破壊型では、中古設備を最新設備と偽って出資しようとしたが、輸入通関時に中国側の商品検験局の審査で簡単に発覚し、中国側の信頼を破壊した事例もある。輸入商品価格についての検査制度があることを知らずに、偽って出資しようとした日本側は無知でお粗末。
第二.企業撤退の方法
(1)出資権持分譲渡(2)解散/精算(3)企業破産−の3つがある。撤退案件全体の4分3程度が(1)によるもの、4分の1程度が(2)のうちの「普通清算」によるもの。特別清算や企業破産は制度としてはあっても、外国企業がブランドイメージや自社の与信状況の低下、また、公的機関主導の手続の中で過去の違法行為(例えば南方ルート)が発覚することをおそれ、その事例はない。不幸にして撤退せざるを得ない場合、一般的な方法は(1)であり、ポイントは譲渡先があるかどうかだが、見つけられれば一番良い方法だ。清算は普通清算(自主清算)の場合でも、やってみれば本当に大変だというのが実感である。
第三.企業撤退の問題点
(1)間口における問題点(2)認可取得における問題点(3)認可後に生じる問題点−に分けることができる。
(1)における問題点で主なものは、イ.企業撤退に反対する当事者が存在する場合、ロ.譲渡価格が論争になる場合、ハ.購入方探索が困難な場合(出資権持分譲渡の場合)がある。イの場合、当事者が反対する理由は様々であり、具体的状況によって対応が異なる。出資権持分譲渡の場合、一部の当事者でも反対されたら原則的にはお手上げになる(撤退等は董事会の全員一致の議決が必要なため)。しかし、親会社の倒産や出資者個人の死亡のような場合には認められるし、また中国側当事者だけでラチがあかない場合は、上級の企業主管部門に直接話しをつけて、当事者を説得したケースもある。
合弁契約等では、一般に仲裁条項を設けている。仲裁に当たっては、最近では著名な日本人仲裁人を仲裁人の一人として指名できるが、これも訪中してもらうのに1回5,000USドルは覚悟しなければならない。従って、仲裁裁定もコスト面からは実際的とは言えない。いづれにしろ、反対する当事者が存在する場合、具体的状況に応じて相手を説得するしかない。撤退費用が一時的にかかっても、長期的に見て撤退した方がよい場合は、思いきって譲歩することも必要だろう。また、初めから万一の撤退の場合を考えて、あらかじめ合弁契約の段階から撤退条件を具体的、数値的に規定しておくことが有効である。ロの場合は、資産評価機構を利用するのがよい。最近では、国家機関の他、外国の会計事務所の現地法人が資産評価機構の資格を得ている場合がある。ハの撤退に際し、いざ資産を処分しようとしても、転売先を見つけるのは実際にはなかなか難しい。香港の不動産会社、オークション、ホームページ、地方政府、ブローカー、邦銀など八方手を尽くしたが、結局タイミングが合わず清算したケースもある。
(2)認可取得における問題点では、当事者の合意により、認可取得条件が整っている場合、原則3日でOK
のことも多い。ただし、多額の未払い賃金や借入金がある場合は、具体的対応が必要になる。自主清算の場合、債務超過でないことが前提で、債務超過を解消するため、一般には日本側が債権放棄してバランスを取っているケースが多い。
(3)認可後に生じる問題点では、一番大きな問題点は、優遇措置の剥奪(2免3減、輸入免税)であろう。自社で状況を把握するとともに、税務税関当局と事前に相談し、返還数字等を確認しておくことが肝要である。案外見落としがちで、しかも追徴された場合の金額は意外に多いもの。土地使用権に関する問題も多い。これは、土地使用権の現物出資が適正になされていないことから来るもので、「適正になされていない」ケースはいやになるほど多いのが実状である。
なお、村尾氏は昨年独立して、村尾龍雄法律事務所を設立されています。
(海外投資相談員 米永 繁夫) |